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公開日 2025.12.13

AT THE CORE

ひとつ1つのピースに宿る、デザイナーの思考と所作の記憶。
そのレイヤーをたどった先にJOHN MASON SMITH / JANE SMITHの核が静かに姿を現す。

積み重なった時間のなかで息づく、自分たち“らしさ”。
その手ざわりを、さまざまな角度から紐解きながら、いまを見つめていく。

Tシャツをキャンバスに見立て、 アーティストとJOHN MASON SMITH / JANE SMITH のまなざしがそっと重なり合う「THE ARTIST.」
2018年からスタートしたこの企画は、互いの感性が溶け合い、新たなひとつの景色を生み出してきた。今回フォーカスするのは、2025AWシーズンで3度目のタッグとなる写真家 ティム・バーバー。これまでティムがとらえてきた微細な瞬間は、布という媒体に置かれることで、どのような表情を帯びるのか。その視点の源流と、プリントに込めた思いをきいた。

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Tim Barber ティム・バーバー

1979年生まれ。
ニューヨークを拠点に活動するマサチューセッツ出身の写真家。 主に若者のカルチャーや都市の景観をテーマにした作品を得意とし、彼の作品はリアルな感覚と不安定な瞬間を捉えた独特のスタイルで知られています。 ウェブサイト『tinyvices.com』を通じて若手写真家の作品を展示するプロジェクトを立ち上げ注目を集めました。
彼の作品は多くの展示会や出版物で世界中に広く紹介されています。 写真集『High School』(07'), 『Untitled Photographs』(10')など。

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ーまず、あなたが写真を始めたきっかけから教えてください。

両親ともに写真家ということもあり、幼い頃から多くのアートや写真の本に囲まれて育ちました。本格的にシャッターを切り始めたのは、高校生の頃。当時夢中になっていたスケートボード雑誌の影響が大きかったと思います。暗室でフィルムを現像し、プリントを焼く作業が大好きで、時間があれば暗室にこもっていました。

ーあなたの作品には一貫した「静けさ」や「余白」を感じます。あなたが写真として切り取りたいものについて教えてください。

作品から“穏やかさ”を感じていただけるのは、とても嬉しいです。写真にはどこか瞑想的な側面があると思っています。私は、不思議さや好奇心を呼び起こすもの、神秘的で意味が宿っているように見える瞬間に自然と惹かれます。写真はさまざまな表現の手段になりますが、ときにはメモのように、日常の一瞬をそっと記録するために使うこともあります。

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ーあなたは、これまでニューヨークで暮らし、創作を続けてきました。ニューヨークという土地は、あなたの表現にどんな影響を与えていますか?

ニューヨークはとても社交的でクリエイティブな街。常に私に刺激をくれる場所です。現在は、ニューヨーク州北部の田舎に住んでいますが、街へは頻繁に足を運んでいます。あの街が持つエネルギーが、今でも大好きなんですよね。

ーちなみに、最近はどのようなものから影響を受けていますか?

最近は、息子のガスを撮るのがなによりも楽しいですね。2歳半になるのですが、日々どんどん成長していくので、撮らずにはいられません。

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ーアーティスト・コミュニティでの経験や、そこから得るインスピレーションについても教えてください。

2005年に立ち上げたオンラインギャラリー「tinyvicesarchive.com」を、今年の始めに再始動しました。これは、ソーシャルメディアが存在しなかった当時、世界中のアーティストや写真家とつながる場所が欲しいと思い、インターネットの自由さと可能性を頼りに始めたプロジェクトです。現在、このアーカイブには680人以上のアーティストから寄せられた一万点以上の作品が掲載されています。更新情報は、ぜひ @tinyvicesarchive でチェックしてみてください。

ー今回のコラボレーションについても教えてください。「THE ARTIST.」では、Tシャツがあなたのキャンバスになります。ファッション・文化・アートの関係をどのように捉えていますか?

アートとファッションは、どちらも「文化」を形づくる大きな会話の一部だと思います。なにかを作り、それを世の中に発信すること自体が、その会話に参加していること。誰もがそれぞれのやり方で、その対話の流れに関わっていると思っています。

ー「衣服にアートを落とし込む」ことに、どんな可能性を感じていますか?

Tシャツは“究極のキャンバス”のひとつだと思っています。自分の写真がプリントされたTシャツを着た人が街を歩いているところを想像するだけでワクワクしますし、いつか作品を身にまとった誰かとすれ違えたら嬉しいです。

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ー最後に、このインタビューを読んでいる方々、そして JOHN MASON SMITH / JANE SMITH とのアーティストコラボレーションを楽しみにしている方々へ、メッセージをお願いします。

このプロジェクトを通じて、日常の中にある小さな発見や、ほんの一瞬の美しさを見つけてもらえたら嬉しいです。アートは特別な場所にあるのではなく、いつも私たちのすぐそばに存在しています。Tシャツという身近なアイテムを介して、写真や表現がより自由に、自然に人とつながっていくーー。そんなきっかけになれたらと思っています。

TEXT: FUMIKA OGURA